ナウシカの肩に乗っている小さな動物テトは、「キツネリス」という架空の生き物です。キツネのような大きな耳とリスのような長い尾を持ち、本来は人に慣れない種類だとされています。それがナウシカにだけはなつき、映画でも漫画でもずっと行動を共にしました。
映画ではテトが死ぬ場面は描かれませんが、宮崎駿監督が描いた漫画版では、テトは物語の終盤で命を落とします。映画しか観ていない人には、意外に感じる結末かもしれません。
この記事では、テトがどんな動物なのか、なぜナウシカにだけ心を開いたのか、漫画で描かれたその後と最期、そして『天空の城ラピュタ』に出てくるキツネリスとの関係を整理します。
テトの正体は何の動物なのか
テトの種類は「キツネリス」です。現実にいる動物ではなく、『風の谷のナウシカ』の世界にだけいる小さな獣として描かれています。英語では「Fox-squirrel」と書かれ、名前のとおりキツネとリスを合わせたような姿です。
設定資料などで紹介されている特徴と、映画で声を担当した人は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 種類 | キツネリス(架空の小動物) |
| 体 | 長い尾と耳 |
| 毛の色 | 黄色の地に茶色の大まかな横じま |
| 目 | 緑色 |
| 食べもの | 何でも食べる雑食 |
| 声(映画) | 吉田理保子さん |
大きな耳から、砂漠にすむフェネックに似ているという声もあります。ただ、モデルになった動物ははっきりしていません。腐海や王蟲と同じく、ナウシカの世界のために作られた生き物と見るのが自然です。
「テト」という名前は、ナウシカがつけたものです。作中のテトは、ナウシカの胸元や肩にいつも収まっています。
テトはどうやってナウシカのもとに来たのか
テトをナウシカに渡したのは、師匠のユパです。映画では、風の谷へ1年半ぶりに帰る途中のユパが、虫にさらわれていくキツネリスを見かけます。ユパはそれを人間の子どもと見間違え、助けようと銃を撃ちました。その音に怒った王蟲に追われていたところを、ナウシカに救われます。
助け出されたキツネリスは、そのままナウシカのものになりました。漫画では、テトをさらった虫は「大王ヤンマ」とされています。
ユパが子どもと見間違えたほど、キツネリスは小さくて弱い生き物です。その小さな命を守ろうとして撃った一発から、テトとナウシカの縁が始まりました。ユパがどんな人物なのかは、ナウシカのユパ様は何者?45歳の剣士の旅と漫画での最期で詳しくまとめています。
なぜテトはナウシカにだけなついたのか
キツネリスは、本来は人に慣れない生き物です。ユパから受け取った直後のテトも、ナウシカが差し出した指にかみつきました。
それでもナウシカは手を引っこめず、「おびえていただけなんだよね」と声をかけます。するとテトはかむのをやめ、ナウシカに心を開きます。テトの登場場面でいちばんよく知られたやり取りです。人に慣れないはずの生き物が、かまれても手を引かなかった相手にだけ心を許したことになります。
この場面は、ナウシカという人物の紹介にもなっています。ナウシカは、怒って暴れる王蟲にも、敵の兵士にも、まず「なぜ怒っているのか」「何におびえているのか」を見ようとする人です。かみついた小動物を叱らず、怖がっていたのだと受け止める。王蟲に対しても、のちのクシャナに対しても、ナウシカは同じやり方で向き合います。
「迷子のキツネリス」というたとえ
テトとの出会いは、のちの場面で言葉としても返ってきます。映画の中盤、ナウシカは銃を向けてくるトルメキアの皇女クシャナに、こう言います。
あなたは何をおびえているの。まるで迷子のキツネリスのように。
銃を向けてくる相手を、かみついてきたテトと同じものとして見ているわけです。テトとの出会いは小さな場面ですが、ナウシカが人や虫とどう向き合うかを、最初に見せる場面だったと僕は考えています。クシャナがどんな人物なのかは、ナウシカのクシャナは何者で何歳?で整理しています。
漫画のテトはその後どうなったのか
漫画版『風の谷のナウシカ』のテトは、物語の終盤で死んでしまいます。漫画は映画よりずっと長い物語で、ナウシカは風の谷を出て、戦争の続く土地を旅し続けます。テトはその長い旅にも、ずっとついていきました。道中では、ナウシカが助けた幼い子どもとじゃれ合う姿も描かれています。
巨神兵の「毒の光」で弱っていった
終盤、ナウシカは巨神兵と行動を共にするようになります。巨神兵の体から出る「毒の光」は、まわりの生き物の体をむしばむものでした。小さなテトは、この光にあてられて少しずつ弱っていきます。
テトが息を引き取るのは、最終巻の第7巻です。ナウシカはテトを、旅の途中でたどり着いた「庭」の端にある大きな木の根もとに埋めました。
映画と漫画で結末が違う理由
映画は1984年に公開されましたが、漫画はその後も連載が続き、完結したのは1994年です。映画は漫画の序盤をもとにしているので、テトの最期までは届いていません。
僕は、テトの死を、巨神兵の力が生き物を傷つけるものだと、ナウシカにいちばん近い命で見せた場面だと読んでいます。どんな生き物にも心を開いてきたナウシカが、自分の選んだ道の代償を、まず一番そばにいた小さな相棒で受け取ることになりました。
漫画では、テトを贈ったユパも旅の途中で命を落とします。谷の外の世界を教えてくれた師と、いつも肩にいた小さな相棒。映画では死ぬ場面のない2人を、漫画のナウシカは旅の終わりまでにどちらも失うのです。映画と漫画の違いは、ナウシカの原作漫画は映画とどう違う?の記事で読めます。
ラピュタに出てくるキツネリスはテトなのか
『天空の城ラピュタ』にも、キツネリスが登場します。パズーとシータがたどり着いた空の城ラピュタで、庭の世話をするロボット兵のまわりに、キツネリスが姿を見せます。
ジブリの資料でも、キツネリスは『天空の城ラピュタ』にも出てくる動物として紹介されています。ただ、ラピュタにいるのはテト本人ではなく、同じ種類の別のキツネリスと考えるのが自然です。2作は舞台の世界も時代も別の物語で、作中でテトとのつながりは説明されていません。ラピュタのキツネリスには名前もありません。
『風の谷のナウシカ』は1984年、『天空の城ラピュタ』は1986年の作品です。僕は、宮崎監督が気に入った生き物を次の作品にも住まわせた、という程度に受け取っています。庭の世話をするロボット兵と、戦うロボット兵の違いは、天空の城ラピュタのロボット兵は何体いる?も合わせてどうぞ。
まとめ
- テトは「キツネリス」という架空の小動物。長い尾と耳、黄色に茶色のしま模様で、モデルの動物ははっきりしていない
- ユパが虫にさらわれたキツネリスを助け、ナウシカが譲り受けた。本来は人に慣れない生き物
- 指をかまれても「おびえていただけなんだよね」と受け止めたナウシカに、テトは心を開いた
- 映画ではテトが死ぬ場面はないが、漫画では巨神兵の「毒の光」で弱り、第7巻で死んで「庭」の大きな木の根もとに埋められる
- ラピュタにもキツネリスは出てくるが、テトとは別の個体
ナウシカの世界を形にした場所に興味がある人は、ジブリパークのナウシカエリアはいつできる?で、決まっていることを整理しています。
参考
- 風の谷のナウシカ 作品紹介(スタジオジブリ) — https://www.ghibli.jp/works/nausicaa/
- 宮﨑駿『風の谷のナウシカ』ワイド判 第1巻・第7巻(徳間書店)
- 風の谷のナウシカ — Wikipedia(動物の節・テトの項) — https://ja.wikipedia.org/wiki/風の谷のナウシカ


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