『ハウルの動く城』の荒地の魔女は、50年前に悪魔と契約して王宮を追われた魔女です。大きな体に毛皮と宝石という豪華な姿は、魔力で保っていたものでした。サリマンに魔力を抜かれると、本当の年齢のしぼんだおばあちゃんに戻ります。
映画は、若い頃の荒地の魔女を一度も見せません。手がかりになるのは原作の小説で、そこでの魔女は美しい若い女性に化けてハウルに近づいた、最後はハウルに倒される悪役です。
この記事では、荒地の魔女の正体、若い頃の姿、おばあちゃんになった理由と年齢、原作との違いを整理します。
荒地の魔女は何者なのか
荒地の魔女は、王国のはずれの「荒地」に住む魔女です。50年前に悪魔と契約したために、王宮を追い出されました。ハウルが火の悪魔カルシファーと契約しているのと同じく、魔女も悪魔と取引をして力を得た魔法使いです。
映画の序盤での姿は、黒い毛皮のドレスに宝石をつけた、裕福な婦人のよう。体が大きく、輿(こし)に体を押し込んでやっと乗れるほどです。身の回りのことは、黒くてどろっとした人型の手下にさせています。声を演じたのは美輪明宏です。
魔女が追いかけているのは、ハウルの心臓です。若さと美しさにこだわる魔女にとって、強い魔力を持つハウルの心臓は何より欲しいものでした。ソフィーが呪いを受けたのも、ハウルと関わったことがきっかけでした。街で兵隊にからまれたソフィーを、ハウルが助けます。その夜、帽子屋に荒地の魔女が現れ、ソフィーを老婆の姿に変えてしまいました。呪いのことを人に話せない、というおまけまでついています。
自分を王宮から追放したサリマンのことは、ずっと恨んでいます。
若い頃の荒地の魔女はどんな姿だったのか
映画の魔女は、若い頃の姿を一度も見せません。ハウルとの昔の関係も、映画では語られないままです。
序盤の豪華な姿も、若い頃ではなく、魔力で年齢をごまかしていた「今の姿」です。魔力を失うと一気にしぼむので、僕はあの見た目は魔法で作ったものだったと読んでいます。
若い頃の姿が分かるのは、原作の小説だけです。原作の魔女は美人として描かれていますが、ハウルと短いあいだ付き合っていた頃は、若い女性の姿に化けていました。原作では、ハウルが離れていったあと、魔女はハウルに呪いをかけています。
原作のこの関係を知ると、映画の魔女がハウルの心臓にこだわる姿は、離れていった昔の相手を取り戻したい気持ちにも見えてきます。
なぜ老いて、おばあちゃんになったのか
荒地の魔女がおばあちゃんになるのは、王宮でサリマンにすべての魔力を抜き取られたからです。残ったのは、本当の年齢に戻った小さなおばあちゃん。自分を追い出した相手の手で、魔法でごまかしてきた年月を一度に取り上げられました。
変わったのは見た目だけではありません。心のほうも年を取り、ぼんやりした様子になります。
サリマンにとっては、昔王宮から追い出した魔女への罰でした。魔法を取り上げてしまえば、魔女はもう誰にも害を与えられません。
サリマンはその場でソフィーに、王のために戦わなければハウルも同じ目にあう、と忠告します。
荒地の魔女は何歳なのか
映画にも原作にも、決まった年齢は出てきません。
分かっているのは、50年前に悪魔と契約して王宮を追われたことです。原作でも、物語が始まる50年前に荒地へ追放されたと書かれています。その時点ですでに大人の魔女だったと考えれば、少なくとも70歳は超えていそうです。ただ、これは数字から考えた目安で、公式に示された年齢ではありません。
ちなみに、ソフィーの「90歳」も決まった年齢ではありません。ソフィーの義母ハニーが、ドア越しに聞いたソフィーの声から受けた印象の言葉です。つまり、魔女もソフィーも、見た目や声から受ける印象で年齢が語られているだけです。
なぜ最後は仲間になったのか
魔力を失った魔女は、動く城で暮らすことになります。自分に呪いをかけた相手なのに、ソフィーは魔女を「おばあちゃん」と呼んで世話をしました。
城での魔女は、ただ弱っただけではありません。サリマンから届いた葉巻を見て、そのたくらみを見抜く場面があります。恋に悩むソフィーに助言することもあります。昔の鋭さを、ときどき見せるのです。
それでも、ハウルの心臓へのこだわりだけは最後まで消えません。カルシファーがハウルの心臓を持っていると気づくと、火の悪魔をつかんで離さなくなります。結局、ソフィーの頼みを受け止めて心臓を手放したところで、魔女の長い執着は終わりました。
この結末までの流れは、ハウルが意味わからないのはなぜ?の「荒地の魔女はなぜ弱くなり、仲間になったのか」でも整理しています。
原作の荒地の魔女とはどう違うのか
原作は、イギリスの作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズの小説『魔法使いハウルと火の悪魔』です。映画とは、魔女の役目がまったく違います。
| 比べる点 | 原作の小説 | 映画 |
|---|---|---|
| 物語での役目 | 最後まで敵として立ちはだかる | 途中で力を失い、城の家族になる |
| ハウルとの関係 | 化けて付き合っていた。ハウルに呪いをかけた | 心臓を狙って追いかける |
| たくらみ | ハウルを使って王を作り、自分は王妃になる | 語られない |
| 最後 | ハウルに倒される | ソフィーに心臓を託す |
原作の魔女は、王の魔法使いサリマン(原作では男性)と王の弟をさらいます。2人の体を組み合わせた「完璧な男」に、ハウルの頭をのせて王にし、自分は王妃になるつもりでした。映画のかわいらしいおばあちゃんとは、まるで別人です。
原作には、魔女とハウルを結ぶもう一つの線があります。ハウルの魔法の先生だったペンステモン夫人は、ハウルが荒地の魔女と同じ道をたどるのではないかと心配していました。原作では、心臓を悪魔に渡したままのハウルは少しずつ人間らしさを失い、いずれ魔女のようになるとほのめかされています。原作の魔女は、ハウルの行き着く先かもしれない姿でもあります。
映画でサリマンがソフィーに、ハウルも同じ目にあうと告げる場面は、この原作の考え方を目に見える形にしたものと僕は読んでいます。悪魔と契約した魔法使いが最後にどうなるのか。その答えを、映画は魔女のしぼんだ姿で見せました。
映画では、魔女を弱らせる役目がサリマンに移りました。そのおかげで魔女は敵の座を降り、観る人がつい同情してしまう人物になっています。戦争を描いた映画の中で、いちばん分かりやすい悪役を、いちばん世話の焼ける家族に変えた。僕は、ここに映画版の荒地の魔女の面白さがあると考えています。
まとめ
- 荒地の魔女は、50年前に悪魔と契約して王宮を追われた魔女。ハウルの心臓を狙い、サリマンを恨んでいる
- 豪華な姿は魔力で保っていたもの。映画に若い頃の姿は出てこないが、原作では若い女性に化けてハウルと付き合っていた
- おばあちゃんになったのは、王宮でサリマンにすべての魔力を抜かれ、本当の年齢の姿に戻されたから
- 決まった年齢は示されていない
- 原作では最後までの悪役で、ハウルに倒される。映画では城の家族になり、最後にハウルの心臓を託す
魔女が最後に暮らしたハウルの城は、ジブリパークの魔女の谷に建っています。入れるチケットの違いはジブリパークのチケット7種類の違い|プレミアムは必要?で比べています。
参考
- ハウルの動く城 — Wikipedia — https://ja.wikipedia.org/wiki/ハウルの動く城
- Howl’s Moving Castle (novel) — Wikipedia — https://en.wikipedia.org/wiki/Howl%27s_Moving_Castle_(novel)
- スタジオジブリの作品一覧(ハウルの動く城) — https://www.ghibli.jp/works/howl/


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