『天空の城ラピュタ』でパズーが朝に吹くトランペットの曲は、『ハトと少年』です。作曲は久石譲。実際に吹いたのは、金曜ロードショーの初代オープニングでもトランペットを吹いた数原晋さんです。
パズーは、日の出とともにこの曲を吹き、飼っているハトにエサをやるのを毎朝の日課にしています。シータとの物語も、この朝の場面から動き出します。
この記事では、曲名と演奏した人、パズーが毎朝トランペットを吹く意味、飼っていたハトのその後、この曲が宇宙で流れた話を整理します。
パズーが吹いている曲は何という曲か
曲名は『ハトと少年』です。『スラッグ渓谷の朝』という呼び名が添えられることもあります。スラッグ渓谷は、パズーが暮らす鉱山の町のある谷の名前です。題名の「ハト」はパズーが飼っているハト、「少年」はパズー自身のこと。曲名だけで、あの朝の場面がそのまま浮かぶ付け方です。
作曲と編曲は、映画の音楽を担当した久石譲。映画の公開前、1986年5月に出たイメージアルバム『天空の城ラピュタ 空から降ってきた少女』にも、2曲目に同じ題名の曲が入っています。映画は1986年8月の公開なので、パズーの朝の曲は、本編より先にアルバムの中で形になっていたことになります。
トランペットの音は、パズー役の声優が吹いたものではありません。演奏したのは、トランペット奏者の数原晋さんです。映画のパズーは見習いの少年ですが、音はプロの演奏です。
パズーはなぜ毎朝トランペットを吹くのか
作中で、パズーが吹く理由は説明されていません。分かっているのは、日の出とともに吹き、ハトにエサをやるのが毎日の決まりだということです。
パズーは、鉱山で働く見習いの機械工です。親方のもとで働き、家では父が遺した写真を飾って、自分で作る飛行機の完成を夢見ています。両親はどちらも亡くなっていて、パズーは小さな家にひとりで暮らしています。
ひとり暮らしの少年が、毎朝決まった時間に屋根の上でトランペットを吹く。僕は、この日課がパズーにとって「今日も始める」ための合図だと読んでいます。誰かに起こされるわけでも、褒められるわけでもない。それでも毎朝続けているところに、父の夢を継いで前を向こうとする性格が出ている、と僕は見ています。働く毎日の中で、自分のためだけに使える短い時間でもあります。
トランペットの場面で物語はどう動くのか
前の夜、空から降りてきたシータを受け止めたパズーは、彼女を自分の家に運んで寝かせました。
翌朝、パズーがトランペットを吹き、ハトにエサをやっているところへ、目を覚ましたシータがやってきます。その後、家に飾られたラピュタの写真をシータが見ていることに気づき、パズーは父の話を打ち明けました。
パズーの父は、ラピュタを一度だけ見て写真に撮ったのに、誰にも信じてもらえず、詐欺師扱いされたまま亡くなった。だから自分がラピュタを見つけて、父が正しかったことを示したい。2人が出会って最初に交わす大事な話は、トランペットの朝から始まります。
パズーの父が何者だったのかは、パズーの父親は何者?ラピュタを見たのに嘘つき扱いされた理由で詳しく整理しています。
飼っていたハトはその後どうなったのか
パズーは、ドーラ一家の仲間になって町を出るときに、飼っていたハトを全部逃がしています。空の旅に出れば、もう世話ができないからです。両親を亡くしてひとりで暮らすパズーにとって、毎朝エサをやるハトは、家族のような相手だったとも言えます。
仲間入りは急に決まりました。要塞から帰ったパズーは、家で待ち伏せていたドーラ一家に、シータを助けるため自分も連れて行ってほしいと頼みます。ドーラの返事は「40秒で支度しな」。父の形見のゴーグルを着けて家を飛び出す、その慌ただしい出発の中で、ハトとも別れています。
毎朝のトランペットとハトのエサやりは、パズーの「町での暮らし」そのものでした。ハトを放したことで、その暮らしは終わります。僕はここを、パズーが自分で「戻れない旅」を選んだ印だと考えています。トランペットを吹く穏やかな朝には、もう戻れません。それでもパズーは、シータと一緒に行く道を選んでいます。
このあとのパズーは、ドーラ一家の飛行船タイガーモス号で、老技師のもと機関の手伝いをして働きます。親方のもとで鍛えた機械の腕は、空の上でもそのまま役に立っています。
演奏した数原晋さんはどんな人か
数原晋さんは、1946年生まれのトランペット奏者です。映画やテレビ、歌謡曲の録音で数多くの演奏を担当してきました。時代劇の「必殺シリーズ」や、山口百恵の「いい日旅立ち」でもトランペットを吹いたと報じられています。耳にしたことはあっても、演奏者の名前までは知らない人が多いかもしれません。
ジブリのファンにとって身近なのは、金曜ロードショーの初代オープニングでしょう。番組の初代オープニング曲「フライデー・ナイト・ファンタジー」でトランペットを吹いていたのが、数原さんでした。
数原さんは2021年4月に74歳で亡くなっています。その年の5月14日、金曜ロードショーは感謝を込めて、数原さんがソロを吹く初代オープニングで放送しました。初代オープニングの時代に金曜ロードショーで観ていた人は、番組の始まりと朝の場面で、同じ人のトランペットを聴いていたわけです。
『ハトと少年』は宇宙でも流れたのか
流れています。2010年4月、国際宇宙ステーションに滞在していた宇宙飛行士たちは、この曲で朝を迎えました。
宇宙飛行士の朝には、地上の管制センターから「目覚まし」の曲が流されます。この日に選ばれたのが『ハトと少年』で、日本の山崎直子宇宙飛行士のためにかけられた曲でした。日本時間では4月8日の午前9時21分。スペースシャトルで運んだ機材を宇宙ステーションに移す作業が始まる日の朝でした。
海外のアニメニュースサイトは、この曲を選んだのは山崎さんの娘さんだったと伝えています。地上の家族から届いた、朝の贈り物です。
映画の中で朝を告げていた曲が、宇宙でも一日の始まりの曲に選ばれました。
まとめ
- パズーが朝に吹く曲は『ハトと少年』。作曲は久石譲で、演奏はトランペット奏者の数原晋さん
- 日の出とともにトランペットを吹き、ハトにエサをやるのがパズーの日課。吹く理由は作中で語られない
- この朝の場面のあと、パズーはシータに父とラピュタの写真の話を打ち明ける
- 飼っていたハトは、ドーラ一家の仲間になって町を出るときに全部逃がした
- 数原さんは金曜ロードショーの初代オープニングも演奏。『ハトと少年』は2010年に宇宙ステーションの目覚ましの曲にも選ばれた
「バルス」の場面の意味はラピュタのバルスはどういう意味?で整理しています。ジブリパークで作品の世界に触れたい人は、ジブリパークのチケット7種類の違いも参考になります。
参考
- 天空の城ラピュタ 作品紹介(スタジオジブリ) — https://www.ghibli.jp/works/laputa/
- 天空の城ラピュタ — Wikipedia(登場人物・音楽) — https://ja.wikipedia.org/wiki/天空の城ラピュタ
- 今夜の金ローで初代オープニング復活 トランペット奏者・数原晋さんに感謝込め(シネマトゥデイ 2021年5月14日) — https://www.cinematoday.jp/news/N0123418
- STS-131ミッション 飛行4日目開始(JAXA 2010年4月7日) — https://iss.jaxa.jp/iss/19a/news/fd04_begin.html
- Space Shuttle Gets Laputa Anime Music Wakeup Call(Anime News Network 2010年4月8日) — https://animenewsnetwork.com/news/2010-04-08/space-shuttle-gets-laputa-anime-music-wakeup-call

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