ナウシカの王蟲(オーム)は、成虫になると体長70メートルを超えます。生まれたばかりの子どもは50センチほど。脱皮をくり返しながら、100倍以上の大きさに育つ生き物です。
映画の王蟲は画面いっぱいに映ることが多く、大きさがつかみにくいのが難点です。終盤に出てくる子どもと、大群の大人では、同じ生き物とは思えないほど大きさが違います。
この記事では、王蟲の大きさと成長のしかた、14個の目の色が変わる意味、抜け殻の使い道、王蟲が人の心を分かるのかを順に整理します。最後に、漫画で明かされる王蟲の正体にも触れます。
王蟲の大きさは何メートルなのか
成虫は70メートルを超えます。『スタジオジブリ作品関連資料集 型録 I』(1996年)に載っている数字です。
ネットでは「80メートル」と紹介されることもあります。ただ、ジブリの資料集が示しているのは「70メートルを超える」という書き方です。上限を決めた数字ではないので、80メートルの王蟲がいてもおかしくはありません。
70メートルは、25メートルプールを縦に3つ近く並べた長さです。映画の王蟲は地面すれすれに体を伏せて動くので、高さより長さのほうが目立ちます。腐海の森の中を進むときは、木々をかき分けるというより、森そのものが動いているように見える大きさです。
王蟲は腐海の植物ムシゴヤシを食べながら進みます。食べ進んだ跡は森の中に一本の通り道になり、「王蟲の道」と呼ばれています。
形はダンゴムシをもとにしていますが、暮らし方はゾウに近いとされています。大きな体でゆっくり動き、群れで行動し、怒ると群れごと止まらなくなります。王蟲が怖いだけでなく、近寄りがたい存在として描かれているのはそのためでしょう。
王蟲の子どもはどれくらいの大きさか
生まれたばかりの王蟲は、体長50センチほどです。そこから脱皮をくり返して大きくなります。
| 段階 | 大きさ | 映画での姿 |
|---|---|---|
| 子ども(幼生) | 50センチほどから | 終盤、ペジテがおとりに使う |
| 成虫 | 70メートルを超える | 冒頭の森、終盤の大群 |
映画の終盤に出てくる子どもは、50センチよりかなり大きく描かれています。ナウシカが体ごと寄り添える大きさなので、脱皮を何度か経た若い王蟲だと読めます。
この子どもが、物語の大きな山場を作ります。ペジテの兵士が、傷つけた王蟲の子をおとりにして、王蟲の大群を風の谷へ誘い込みました。子どもを取り返そうとして、大人の王蟲が怒り狂って押し寄せるわけです。
大きさの差は、そのまま力の差です。子どもは人間に捕まりますが、大人の大群は町ひとつを滅ぼせます。映画でもペジテの町は蟲の大群に襲われて壊滅しました。人間が大群を動かせたのは、捕まえられるほど弱い子どもを使ったからです。
14個の目はなぜ青から赤に変わるのか
赤は怒り、青は落ち着き。目の色は、言葉を話さない王蟲の気持ちを表す合図です。
王蟲の目は全部で14個あります。体の前から3番目の節に6個、4番目の節に8個。どれもガラスのようなドーム形をしています。
色ごとの意味は次のとおりです。
| 目の色 | 王蟲の状態 |
|---|---|
| 青 | 落ち着いているとき(ふだん) |
| 赤 | 怒っているとき |
| 灰色 | 気絶しているとき |
映画のナウシカは、怒った蟲を傷つけずに落ち着かせようとします。蟲笛の音で気をしずめ、森へ帰してやる場面がその一つです。
終盤では、怒り狂って押し寄せた王蟲の大群が、ナウシカを跳ね飛ばしたあと落ち着きを取り戻します。怒りで赤くなった目は、落ち着けば青に戻る。色の変化を知っていると、結末の場面で群れの気持ちが変わったことが読み取れます。
僕は、王蟲がセリフを一言も話さない生き物だからこそ、目の色という分かりやすい合図が与えられたのだと考えています。観ている人は、目の色を見るだけで、この巨大な生き物が敵なのか味方なのかを判断できるのです。
目のドームは、王蟲が脱皮したあとも透明なまま抜け殻に残ります。この丈夫さが、人間の暮らしの中での使い道につながります。
王蟲の抜け殻は何に使われているのか
王蟲の体は、とても硬く、それでいて軽い殻に覆われています。資料では、超硬質セラミックよりも丈夫で、しなやかさもあると説明されています。
硬いのに軽い、という組み合わせが大事なところです。重い鉄とは違い、身につけたまま動き回れる道具の材料になります。
人間たちは、脱皮したあとの抜け殻をさまざまな道具に変えて使っています。
- 殻は、装甲板や刃物に加工される
- 目の透明なドームは、ゴーグルのレンズや乗り物の風防に使われる
腐海のそばで暮らす人々にとって、王蟲の抜け殻は貴重な素材です。
ただし、王蟲に手を出すことには大きな危険がともないます。設定では、およそ300年前に腐海が一気に広がった「大海嘯(だいかいしょう)」は、王蟲を狩りすぎたことが原因とされています。狩りすぎれば、腐海が広がって人の住む土地が減る。抜け殻は使えても、王蟲そのものに手を出すと割に合わない、という設定です。
怖い生き物でありながら、暮らしを支える恵みでもあります。僕は、風の谷の人々と王蟲の関係を、山の獣と猟師の関係に近いと読んでいます。
王蟲はナウシカの言葉が分かるのか
分かります。王蟲は、口に出さずに心で人と話せます。ほかの蟲に指示を出すこともでき、群れ全体がひとつの意識でつながっているような生き物です。
口の中には、金色の細い触手が無数にあります。映画の結末で、大群に跳ね飛ばされて倒れたナウシカを、王蟲たちはこの金色の触手で包み込み、よみがえらせました。
この場面で、ナウシカは青い服をまとい、金色の触手の上を歩きます。風の谷に伝わる「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」という言い伝えの姿です。金色の野の正体は、王蟲の触手でした。心で通じ合える王蟲だから、ナウシカの思いが群れに届いた、と読めます。
漫画では王蟲の正体は何なのか
宮崎駿の漫画版では、王蟲を含む腐海の生き物について、映画にはない事実が明かされます。腐海の生き物は自然に生まれたものではなく、昔の文明が生き物を作り変える技術で人工的に作り出したものでした。
映画だけ観ると、王蟲は森を守る神のような生き物に見えます。漫画を読むと、その王蟲も人間が作ったものだと分かる。映画で王蟲が見せた怒りややさしさも、漫画では「作られた命」が見せたものとして読み直すことになります。この違いが、漫画版の結末の鍵です。
まとめ
- 王蟲の成虫は体長70メートルを超える(ジブリの資料集『型録 I』)。生まれたときは50センチほどで、脱皮をくり返して育つ
- 目は14個。ふだんは青、怒ると赤、気絶すると灰色になる
- 抜け殻は装甲板や刃物に、目のドームはゴーグルや風防に使われる
- 王蟲は心で人と話せる。結末でナウシカをよみがえらせた金色の触手が、言い伝えの「金色の野」
- 漫画版では、王蟲を含む腐海の生き物は昔の文明が人工的に作ったものだと明かされる
漫画で明かされる腐海の役割と結末は、ナウシカの原作漫画は映画とどう違う?腐海の正体と墓所での選択で詳しく整理しています。冒頭で王蟲に追われていたユパについてはナウシカのユパ様は何者?45歳の剣士の旅と漫画での最期へ。ジブリパークにナウシカのエリアができる計画は、ジブリパークのナウシカエリアはいつできる?決まったことと未定の点にまとめました。
参考
- 風の谷のナウシカ 作品紹介(スタジオジブリ) — https://www.ghibli.jp/works/nausicaa/
- 風の谷のナウシカ — Wikipedia(王蟲の項。『スタジオジブリ作品関連資料集 型録 I』の設定を引用) — https://ja.wikipedia.org/wiki/風の谷のナウシカ


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