君たちはどう生きるかのキリコの正体は?若い姿とばあやは同一人物か

『君たちはどう生きるか』のキリコの正体は、屋敷のばあやです。「下の世界」の若いキリコと、ばあやのキリコは同じ人物だと読めます。声はどちらも柴咲コウさんで、服の柄も同じ。しかも物語の最後には、ばあやのキリコの人形が元のばあやの姿に戻ります。

ただ、作中で「この二人は同じ人だ」とはっきり言う場面はありません。だから観た後に「あの若い女の人は誰だったのか」と引っかかる人が多いのです。

この記事では、二人が同じ人物だと言える根拠を並べたうえで、若いキリコが「下の世界」にいた理由、お守りの人形の意味、キリコが眞人に何を教えたのかを整理します。

キリコの正体は?若い姿とばあやは同じ人物なのか

キリコの正体は、眞人の母の実家の屋敷に仕える、7人のばあやの一人です。「下の世界」で眞人を助けた若い漁師は、そのばあやの若いころの姿と読めます。同じ人物と見てよい根拠は4つあります。

根拠中身
声ばあやのキリコも若いキリコも、声は柴咲コウさん
服若いキリコは、ばあやのキリコと同じ柄の服を着ている
人形若いキリコが眞人に渡した「ばあやのキリコの人形」が、最後にばあやの姿に戻る
帰り道若いキリコは、少女のヒミと同じ扉から自分の時代へ帰る

公開後に発表されたキャストでも、キリコの役は柴咲コウさん一人です。年齢の違う二人に、別々の声を当てていません。英語の吹き替え版でも、キリコ役としてクレジットされているのはフローレンス・ピューさん一人です。

台本でも、二人は同じ名前で書かれています。『THE ART OF 君たちはどう生きるか』に収められたアフレコ用の台本では、元の世界は「きりこ」、「下の世界」は「キリコ」。変えているのは字だけです。

別人なら、名前を変えれば済みます。同じ名前のまま書き方だけを変えたのは、同じ人物の別の時代として扱っているからだと僕は考えています。

若いキリコは「下の世界」で何をしていたのか

若いキリコは、小さな帆船を操る漁師です。「下の世界」に落ちた眞人がペリカンの群れに襲われたところを助け、そのまま自分の仕事を手伝わせます。

キリコの仕事には、二つの役目がありました。

  • 殺生ができない「下の世界」の住人たちに、捕った魚を分ける
  • 生まれる前の魂であるワラワラに、魚のはらわたを与える

ワラワラは、はらわたを食べて力をつけ、上の世界へ飛んでいきます。つまりキリコは、この世界で生き物を殺す役を引き受け、ほかの者たちと、これから生まれる命を養っていたことになります。

眞人はここで、大きな魚をさばくのを手伝います。屋敷では誰とも打ち解けず、自分の頭を石で傷つけた少年が、ここで人と一緒に働き、命を食べ物に変える作業に手を貸します。

ばあやのキリコは、屋敷では煙草好きらしい年寄りとして描かれます。「下の世界」の若いキリコは、男勝りで頼もしい漁師です。同じ人が、年を取る前はこんな姿だった。その落差も、この人物の面白いところです。

なぜ若いキリコが「下の世界」にいたのか

作中ではっきり説明されません。手がかりになるのは、物語の終わりの扉の場面です。

「下の世界」が崩れ始めたとき、眞人たちはそれぞれ別の扉から帰ります。眞人と夏子、青サギ(アオサギ)は「132」の扉から、自分たちの時代へ。ヒミと若いキリコは、ヒサコの少女時代につながる扉から帰りました。

ヒミは、少女時代の眞人の母ヒサコです。ヒサコは子どものころ塔で行方不明になり、1年後に同じ姿で戻ってきた、と作中で語られています。若いキリコがヒミと同じ扉をくぐったことから、キリコもそのころ、ヒサコと一緒に「下の世界」に迷い込んでいたと考えられます。作中で語られてはいませんが、扉の場面はそう読める作りです。

項目ヒミ若いキリコ
元の世界での姿眞人の母ヒサコ(少女時代)屋敷のばあや、キリコ(若いころ)
帰った扉ヒサコの少女時代につながる扉ヒミと同じ扉
帰ったあと屋敷に戻り、のちに眞人を産む年を取り、屋敷のばあやになったと読める

「下の世界」の扉は、それぞれ別の時代につながっていました。眞人はそこで、若いころの母と、若いころのばあやに同時に会っていたことになります。

ばあやのキリコの人形は何だったのか

若いキリコは、夏子を探しに出る眞人に「ばあやのキリコの人形」をお守りとして渡します。

渡されたときはお守りでしたが、この人形の本当の意味は最後の場面で分かります。

眞人が元の世界に戻ったあと、青サギに「まだ向こうのことを覚えてんですかい」と聞かれ、ポケットの中の人形に気づきます。その人形が、ばあやのキリコの姿に戻りました。

ばあやのキリコは、眞人と一緒に塔に入り、「下の世界」に引き込まれています。そのあと、ばあやの姿で眞人のそばにいる場面はありません。人形の姿で、ずっと眞人のポケットの中にいたと読めます。

僕は、この人形を「若いキリコから、年を取った自分への受け渡し」と読んでいます。若いキリコは、未来の自分を眞人に預け、眞人はそれを持って元の世界へ帰った。ばあやのキリコが無事に戻れたのは、若いころの自分が眞人を助けたからでもあるのです。

キリコは眞人に何を教えたのか

若いキリコが眞人にしたことは、三つにまとめられます。

  • ペリカンから命を救った
  • 魚をさばかせ、生き物を食べ物に変える仕事を手伝わせた
  • 青サギと仲直りするよう言い、二人で夏子を探しに行くよう送り出した

命を救い、仕事を手伝わせ、最後に一言だけ背中を押す。長い説教はしていません。屋敷の眞人は、父の再婚相手の夏子にも、学校の子どもたちにも心を開いていませんでした。「下の世界」でキリコと働いたあと、眞人は嫌っていた青サギと組んで、夏子を探しに行きます。

ばあやのキリコは、屋敷で塔に向かう眞人を止めようとした人でした。危ない目に遭わせたくない、という年寄りらしい心配からだと読めます。若いキリコは逆に、眞人を危ない場所へ送り出しました。同じ人物が、年を取る前と後で、少年に別々のものを渡しています。

ヒミが眞人に母の愛を残したとすれば、キリコが残したのは、自分の手で生きていく力だったと僕は考えています。

まとめ

  • 若いキリコとばあやのキリコは同じ人物と読める。声(柴咲コウさん)、同じ柄の服、人形が元の姿に戻る結末、ヒミと同じ扉で帰る場面が根拠
  • 台本では、元の世界は「きりこ」、「下の世界」は「キリコ」と書き分けられている
  • 若いキリコは、ヒサコと同じころ「下の世界」に迷い込んでいたと考えられる。ただし作中で明言はない
  • お守りの人形は、ばあやのキリコそのもの。最後に元の姿に戻る
  • キリコが眞人に渡したのは、魚をさばく仕事の経験と、青サギと組んで夏子を探しに行くきっかけ

『君たちはどう生きるか』の全体の流れやアオサギの正体は、君たちはどう生きるかが意味わからない?アオサギの正体から順に整理で整理しています。主人公の名前の読み方と頭の傷の意味は、君たちはどう生きるかの眞人はなんて読む?「眞」の字と頭の傷の意味にまとめました。『君たちはどう生きるか』を中心にした京都の展覧会「禅とジブリ」は、ジブリパークは大阪にできる?ジブリパーク展は本体とどう違うのかの中で紹介しています。

参考

  • 君たちはどう生きるか 作品紹介(スタジオジブリ) — https://www.ghibli.jp/works/kimitachi/
  • 君たちはどう生きるか (映画) — Wikipedia(登場人物とあらすじ) — https://ja.wikipedia.org/wiki/君たちはどう生きるか_(映画)
  • 「君たちはどう生きるか」場面写真公開(映画.com。公式に解禁されたキャスト) — https://eiga.com/news/20230818/2/

コメント

タイトルとURLをコピーしました