君たちはどう生きるかはつまらない?賛否が割れた3つの理由

『君たちはどう生きるか』をつまらないと感じた人は、けっして少数派ではありません。観た人の感想ははっきり割れました。日本での興行収入は93.3億円(興行通信社調べ、2024年5月時点)と当たった部類ですが、評判が伸び続けたわけではありません。

割れた理由は、映画の中身だけではありません。予告編もCMも公式サイトもないまま公開されたこと、作中で説明されない展開が続くこと、そして有名な小説と同じ題名であること。この3つが重なっています。

この記事では、つまらないと感じる理由を3つに分けて整理します。あわせて、海外での評価と、宮崎駿監督自身の言葉、観直すときに腑に落ちる観方もまとめます。

つまらないと感じたのは少数派なのか

公開は2023年7月14日。最初の4日間で興行収入21.4億円、観客135万人を集めました。この出だしは『千と千尋の神隠し』の初動を上回っています。

ところが国内の興行収入は93.3億円にとどまりました(興行通信社調べ、2024年5月時点)。初動で上回った『千と千尋の神隠し』の最終成績には、遠く及びません。

強い出足は、宮崎駿監督の10年ぶりの新作という一点で生まれたものです。そこから先を伸ばすのは、観た人が周りにすすめるかどうか。数字の形を見るかぎり、「観てきて」と言いにくい映画だったと読めます。

2025年5月2日には金曜ロードショーで地上波初放送もありました。非公式のファンサイトの集計では世帯視聴率12.4%。同じ集計での『となりのトトロ』13.4%、『天空の城ラピュタ』13.7%と比べると、少し下です。

なぜつまらない、面白くないと感じるのか

理由は大きく3つに分かれます。宣伝、映画の作り、そして題名です。

予告編を1本も見ずに映画館へ行くことになった

1つめは宣伝です。この映画には、予告編もCMも新聞広告も公式サイトもありませんでした。公開前に出たのはポスター1枚だけです。

決めたのは鈴木敏夫プロデューサーです。理由を、文春オンライン(2023年7月21日)でこう語っています。

今まではジブリという会社を運営しなきゃいけなかったから、たくさん宣伝して、なるべく多くのお客さんに見てほしいと考えていたんですよね。で、これまでいろいろやってきて、そろそろいいかな、と。

情報がないこと自体を楽しんでもらう、という狙いでした。その狙いは半分当たり、半分裏目に出たと僕は考えています。

ふだん映画館へ行く人は、予告編で心の準備をしてから席に着きます。どんな話か、どんな調子の作品かが分かったうえで席に着きます。そこが丸ごと抜けた状態で、124分の難しい映画が始まりました。

しかも観客の多くは「宮崎駿の新作」という一点で来ています。頭にあるのは『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』の感触でしょう。そこへ戦時中の疎開と、母を失った少年の話が来ます。落差が大きければ、面白い面白くない以前に、置いていかれた感覚になります。

説明されないまま話が進んでいく

アオサギが何者なのか、塔がなぜそこにあるのか、インコの群れがどこから来たのか。2つめの理由は、こうした点が作中でほとんど説明されないことです。登場した理由が語られないまま次の場面へ進み、そのまま回収されないものもあります。

筋を追いながら「今なぜこうなったのか」を考える観方だと、途中で追いつけなくなります。分からないまま2時間座っている状態は、退屈と区別がつきません。「つまらない」と言われるとき、その中身は「面白くない」ではなく「分からない」であることが多いはずです。

作中の謎そのものについては君たちはどう生きるかが意味わからない?アオサギの正体から順に整理で1つずつ扱いました。読んでから観直すと、少なくとも迷子にはなりません。

有名な小説の映画化だと思って観てしまう

3つめの理由は題名にあります。

『君たちはどう生きるか』は、吉野源三郎が1937年に出した小説の題名でもあります。漫画版で知った人も多い1冊。映画の公開後には岩波文庫版が一時品薄になりました。

ただ、映画はこの小説を映画化したものではありません。小説は、母が眞人のために残した本として作中に出てきます。眞人が見つけて読むのは、母を亡くしたあとです。物語の筋は別のものです。

小説の内容を思い浮かべて映画館に入ると、期待と中身がすれ違います。生き方を説く話を待っていたら、塔とインコとペリカンが出てきます。この食い違いも、評価が割れた一因です。

海外ではどう評価されたのか

評価が割れた一方で、この映画は主要な賞を続けて取りました。

賞発表日・補足
第81回ゴールデングローブ賞 アニメ映画賞日本時間2024年1月8日。日本映画として史上初
第77回英国アカデミー賞 アニメ映画賞日本時間2024年2月19日。日本映画として史上初
第96回アカデミー賞 長編アニメ映画賞日本時間2024年3月11日。『千と千尋の神隠し』以来21年ぶり

いずれもアニメ映画の部門で、日本作品としては最上位にあたる評価です。少なくとも、説明の少なさが欠点として数えられることはありませんでした。

日本の観客と海外の審査員では、見ているところが違ったのだと思います。分からなかった人の感想が間違っているのでもなければ、賞が過大評価なのでもありません。

宮崎駿監督自身は何と言っているのか

宮崎監督は、この映画を自伝ではないとしたうえで、「心の中にあったこと」だと述べています。

もうひとつ、最初の試写の場で代読されたコメントがあります。

おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳が分からないところがありました

作った本人も、分からない部分があると言っています。作品のすべてに答えが用意されているとは限りません。

全部に意味を見つけようとすると、かえって苦しくなります。作り手が意味を用意していない場所を探しても、答えは出てきません。

どう観ると腑に落ちるのか

僕がすすめたいのは、筋を追うのをやめて、眞人の気持ちの動きだけを1本の線で追う観方です。

母を火事で失った少年が、父の再婚相手を母と呼べないまま新しい家に来ます。石で自分の頭を殴り、異世界へ入り、若いころの母に出会う。最後は夏子のいる場所で「一緒に帰ろう」と言えるようになります。ここだけを追うと、映画はまっすぐな話になります。

塔も積み木もインコも、この線に沿って現れる風景です。ひとつずつの意味を決めなくても、眞人が何を抱えて何を手放したかは追えます。

それでも合わない人はいます。合わないことは、観方が下手なのとは違います。ジブリ作品そのものが肌に合わないと感じる人についてはジブリの良さがわからないのは自分だけ?合わない理由と楽になる見方で扱いました。

まとめ

  • 国内の興行収入は93.3億円(興行通信社調べ、2024年5月時点)。初動4日間の21.4億円は『千と千尋の神隠し』を上回りましたが、そこから先は伸び続けませんでした
  • 賛否が割れた理由は3つあります。予告編もCMもない状態で観ることになったこと、作中で説明されない展開が続くこと、吉野源三郎の小説の映画化だと思って観てしまうことです
  • 宣伝をしなかったのは鈴木敏夫プロデューサーの判断で、情報がないこと自体を楽しんでもらう狙いでした
  • ゴールデングローブ賞・英国アカデミー賞・アカデミー賞のアニメ部門を受賞しました。話の分かりやすさとは別のところが評価されています
  • 宮崎駿監督自身が最初の試写で「私自身、訳が分からないところがありました」とコメントしています。全部に意味を探さず、眞人の気持ちの動きだけを追うと筋は通ります

ジブリ作品をもう一度スクリーンで観たい人は、ジブリは今映画館でやってる?次の上映予定で確かめてください。

参考

  • 君たちはどう生きるか (映画)(Wikipedia。公開日・受賞・宣伝の方針・監督の発言・あらすじ) — https://ja.wikipedia.org/wiki/君たちはどう生きるか_(映画)
  • 宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』(nippon.com。興行通信社調べの興行収入 93.3億円) — https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c03710/
  • ジブリ鈴木敏夫が明かした映画『君たちはどう生きるか』宣伝ゼロの理由(文春オンライン・2023年7月21日。宣伝をしなかった理由) — https://bunshun.jp/articles/-/64317
  • 金曜ロードショーのジブリ放送(スタジオジブリ。2025年5月2日に『君たちはどう生きるか』が地上波初放送) — https://www.ghibli.jp/info/013910/
  • 金曜ロードショーでのジブリ作品の世帯視聴率(非公式ファンサイトの集計) — https://ghibli.jpn.org/report/tview/

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