ジブリの良さがわからない人は、自分だけではありません。知恵袋には2008年にも2011年にも「面白さがわからない」「魅力がわからない」という質問が投稿され、掲示板や相談サイトにも同じ悩みが何度も出てきます。周りが盛り上がっているぶん言い出しにくいだけで、合わない人はずっといました。
「みんな好きなのに自分は退屈だった」「観たあとに疲れる」「何が言いたいのかわからない」。こう感じたとき、感性がおかしいのではと不安になる人がいますが、そうではありません。ジブリ作品には、合わない人が出やすい作りの理由があります。
この記事では、まず同じように感じている人の声を確かめ、なぜ合わないのかを3つに分けて整理します。そのうえで、好きな人が何を見ているのか、無理に好きにならなくてよい理由、それでも一度は観ておく価値のある見方を書きます。
良さがわからない人は本当にいるのか
います。しかも少なくありません。
知恵袋に2008年に投稿された質問では、ラピュタもナウシカも魔女の宅急便も観たが、主人公がわざとらしく感じられ、何度観ても良い気持ちにならない、と書かれています。配偶者から「子どもの純粋な心を失った人にはわからない」と言われ、自分が異常なのかと悩んでいる、という内容でした。
2011年の質問は、劇場作品をほとんど観たのに良いと思えたのは『おもひでぽろぽろ』だけ、というものです。回答には「何が言いたいのかさっぱりわからない」「重い雰囲気の割に意図が伝わらない」という同意の声も並んでいます。
相談サイトのOKWAVEや掲示板にも、「観ていて疲れる」「ファンタジーの部分が受けつけない」「『火垂るの墓』以外は良さがわからない」といった投稿があります。感じ方はばらばらですが、共通しているのは「周りが好きすぎて言い出せない」という空気です。
なぜ合わないのか
理由を分けると、大きく3つです。作品側の作りが2つ(説明しない・筋より場面)、周りの状況が1つ(熱量の高さ)。
説明しない作りだから
ジブリの映画、特に宮崎駿監督の作品は、物語の筋や意味をほとんど説明しません。『千と千尋の神隠し』で千尋がなぜ最後に両親を見分けられたのか、『もののけ姫』で結局どちらが正しかったのか、映画は答えを言いません。
これは手抜きではなく、作り手の姿勢です。2010年に東京新聞の記者が森の手入れの現場で宮崎監督を取材したとき、川のゴミ問題を映画にしたのかと聞かれた監督は「そんなのは勝手に思えばいいことで」と返しました。記者は「僕は答えないよ」という監督の言葉も書き留めています。作品の意味は観た人が決めるもので、自分からは説明しない。その姿勢が映画にもそのまま出ています。
答えを渡されない映画は、筋を追って理解したい人にとって、置いていかれる感覚が残ります。「意味がわからない」と感じるのは、映画がそう作られているからです。
物語より、絵と空気で見せる映画だから
ジブリの映画で多くの人が覚えているのは、筋よりも場面です。トトロの雨のバス停、ラピュタの飛行石が光る瞬間、千と千尋の海の上を走る電車。好きな人は、こうした場面の空気や絵の密度を味わっています。
映画を「話の面白さ」で観る人には、これが弱点に見えます。展開が急に飛ぶ、主人公の動機がはっきりしない、終わり方があっさりしている。筋だけを取り出すと物足りない作品は確かに多く、絵や音に心が動かないと、退屈に感じます。筋の手がかりを探しながら観続けることになるので、「観ていて疲れる」という声もここから出てきます。
ジブリを楽しむには「筋を追う」より「場面を浴びる」見方が向いています。場面に心が動かなければ、周りの高い評価だけが残って、置いていかれます。
周りの熱量が高すぎるから
3つ目は作品の外の話です。ジブリは金曜ロードショーで何度も放送され、「国民的アニメ」として語られ、パークや美術館まであります。ここまで持ち上げられていると、少しでも合わなかったときの落差が大きくなります。
知恵袋の回答にも、宣伝の体制が強すぎる、内容が普通でも「ジブリだから」で売れている、という声がありました。作品そのものより、「好きで当たり前」という空気に反発している人も多いようです。合わないと感じたとき、その原因の一部は作品ではなく、周りの期待にあります。
好きな人は何を見ているのか
合わない理由が分かると、好きな人が何を見ているかも見えてきます。2011年の知恵袋の回答から拾うと、次のようなものです。
- 他のアニメにはない世界の広さと、その世界に入り込んだような気持ち
- 自然との関わりなど、子ども向けに見えて重いテーマを扱っていること
- 観終わったあとに心が温かくなる感覚
- 宮崎監督の絵と久石譲の音楽
どれも「筋の面白さ」ではなく、「観ている間の体験」の話です。好きな人は物語を理解したから好きなのではなく、画面と音に運ばれる時間そのものを楽しんでいます。合わない人と好きな人は、同じ映画の別の部分を見ています。
無理に好きにならなくてよい理由
ここまで読んで、それでも合わないなら、それで構いません。理由は2つあります。
1つは、作り手自身が、意味の答えを自分からは説明しない姿勢を取っていることです。「勝手に思えばいい」と返した以上、観客の側に「正しい理解」が用意されているわけではありません。わかったつもりの人とわからない人の間に、優劣はありません。
もう1つは、ジブリが「1つの作風」ではないことです。宮崎駿監督と高畑勲監督では作りがまったく違いますし、2011年の質問者のように『おもひでぽろぽろ』だけは良かった、という人もいます。ジブリ全体が合わなくても、1本だけ刺さる作品があることは珍しくありません。「ジブリの良さ」という1つのものがあるわけではなく、作品ごとに良さも弱さも違います。
それでも一度試すなら、どう観るか
「せっかくだから、好きになれるなら好きになりたい」という人向けに、僕が考える見方を3つ挙げます。
筋を追うのをやめて、場面で観る。 話の意味を考えず、好きな場面が1つでもあればよし、というつもりで観ると負担が減ります。ジブリの映画には、1本に必ずと言っていいほど「ここだけは好き」と言える場面があります。
短くて明るい作品から入る。 『となりのトトロ』『魔女の宅急便』は筋が単純で、説明不足の感覚が出にくい作品です。『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』は説明を省く度合いが強く、最初に観ると「意味がわからない」で終わりやすい作品です。順番を変えるだけで印象は変わります。
わからなかった場面は、あとから答え合わせをする。 説明されなかった部分は、観たあとに調べると腑に落ちることがあります。たとえば『もののけ姫』のシシ神の死についてはもののけ姫のラストの意味|シシ神はなぜ死ぬ?、『千と千尋の神隠し』の「振り返ってはいけない」については千と千尋のラストでなぜ振り返ってはいけない?で整理しています。わからなさが「謎」に変わると、映画の見え方も変わります。
まとめ
- ジブリの良さがわからない人は昔からいて、知恵袋にも掲示板にも同じ悩みが並んでいる。自分だけではない
- 合わない理由は、答えを説明しない作り、筋より絵と空気で見せる作り、周りの熱量の高さの3つ
- 好きな人は物語の理解ではなく、観ている間の体験を楽しんでいる。同じ映画の別の部分を見ている
- 作り手自身が意味を説明しない姿勢なので、わからなくても優劣はない。ジブリ全体が合わなくても1本だけ刺さることはある
- 試すなら、筋を追わず場面で観る、明るい作品から入る、わからなかった場面はあとから答え合わせをする
参考
- ジブリ作品の面白さがわからない(Yahoo!知恵袋・2008年) — https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1317757803
- ジブリ苦手(OKWAVE) — https://okwave.jp/qa/q7181032.html
- 宮崎駿監督/「答えない」と言いつつ説く(日本記者クラブ 取材ノート・2025年。2010年の東京新聞の取材の回想) — https://www.jnpc.or.jp/journal/interviews/35338


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