まっくろくろすけの本当の名前は「ススワタリ」です。まっくろくろすけのほうは、『となりのトトロ』でお父さんが絵本の名前として持ち出し、サツキとメイも使うようになった呼び名。ススワタリだと教えるのは、隣に住むカンタのばあちゃんです。
『千と千尋の神隠し』のボイラー室で石炭を運んでいる黒いやつも、同じススワタリと呼ばれています。ただし姿には違いがあり、同じ生きものだとスタジオジブリが明言したことはありません。
この記事では、ススワタリが何者なのか、2つの呼び名がどうつながっているのか、2作品の黒いやつは何が違うのかを順に整理します。
まっくろくろすけの正体は何なのか
誰もいない古い家に湧く、小さな黒い生きものです。
姿は栗のイガに似ています。黒くて丸く、毛が四方に伸びていて、真ん中に目が二つ。手も足もありません。『となりのトトロ』では、ふわふわと浮いたり、束になって天井へ抜けていったりします。
住みつくと、家の中をススとホコリだらけにしてしまいます。触れば手が真っ黒になります。メイが捕まえたあと、サツキと二人で真っ黒な手を見せ合う場面のとおりです。
サツキとメイが草壁家に着いてすぐ、裏の勝手口から入った風呂場の暗がりで、大量に散っていくのがこの生きものでした。「まっくろくろすけ 出ておいで」と呼びかける場面は、よく知られています。
暗がりでざわっと動く粒の群れ。顔もセリフもないのに、家に何かがいることだけは伝わります。妖怪や幽霊として説明されないぶん、かえって「そういうものがいる家」という感覚が残ります。
本名はススワタリ?まっくろくろすけとの関係
ススワタリが本来の名前で、まっくろくろすけのほうは絵本から来た言葉です。「真っ黒黒助」と漢字で書かれることもあります。
風呂場で見たものをサツキが報告すると、お父さんは「マックロクロスケだな」と返します。サツキが絵本に出ていたあれかと聞き返すので、家にある絵本の名前だと分かります。明るいところから急に暗いところへ入ると目がくらんでマックロクロスケが出る、というのがお父さんの説明でした。姉妹はその日から、黒い影をその名前で呼びます。
本当の名前を教えるのは、隣に住むカンタのばあちゃんです。ばあちゃんは、それをススワタリと呼びます。誰もいない古い家に湧いて、そこら中をススとホコリだらけにするもの。恐ろしいものではなく、人が住み始めるといつの間にかいなくなる、とも話します。自分も小さいころには見えた、と言い添えます。
ばあちゃんのひと言で、得体の知れないものが「昔からいるもの」に変わります。サツキもメイも、そこから先はまっくろくろすけを怖がりません。
名前が2つあるのは、正体が分かる前と後の呼び方が、どちらも作品に残っているからです。広く知られているのは、絵本から来たまっくろくろすけのほう。劇中でその生きものの名前として説明されるのは、ばあちゃんが口にするススワタリです。
千と千尋の黒いやつと何が違うのか
同じ「ススワタリ」と呼ばれながら、姿も暮らしぶりも違います。
| 項目 | となりのトトロ | 千と千尋の神隠し |
|---|---|---|
| 姿 | 黒い球体に目が二つ。手足はない | 黒い球体に目が二つ。細い手足がある |
| 動き | 浮いたり、飛び散ったりする | 歩いて石炭を運び、炉に投げ込む |
| 立場 | 空き家に住みついている | 釜爺の下で働いている |
| 食べもの | 作中に描かれない | 休憩に金平糖をもらう |
| 呼ばれ方 | まっくろくろすけ(草壁家の呼び名) | チビ共(釜爺) |
いちばん分かりやすい違いが手足です。『となりのトトロ』のほうは丸いまま浮いているのに対し、ボイラー室のススワタリには細い手足が生えていて、自分の体より大きな石炭を抱えて運びます。
働くことには理由があります。千尋が、潰れてしまった一匹の代わりに石炭を運んでやる場面。あれを見たススワタリたちが次々と潰れた真似をしだすと、釜爺は、働かなければこいつらの魔法は消えてしまうと言います。
魔法でススから生まれた体らしく、働くのをやめればただのススに戻ってしまう。働かなければ姿を失うという点は、油屋(湯屋)で働かなければ豚にされる千尋の立場と重なります。
休憩のときに金平糖をもらう場面も、この設定の延長にあります。働いた見返りに甘いものが配られる。空き家でただ浮いているだけだった生きものが、給料をもらう働き手として描き直されています。
油屋という場所そのものが何を描いているのかは、千と千尋の神隠しは結局何を伝えたい話?企画書にある3つのねらいで整理しました。
2作品のススワタリは同じ生きものなのか
同じものだとも、別のものだとも、スタジオジブリは説明していません。
分かっているのは、名前が同じで、姿の基本も同じだということ。『となりのトトロ』が1988年、『千と千尋の神隠し』が2001年の公開ですから、13年の開きがあります。
僕は、両者を「同じ種類の生きもの」と読むのが一番しっくりくると考えています。ススのあるところに湧いて、放っておけば丸いまま浮いている。そこに油屋の魔法が加わると、手足が生えて石炭を運ぶ働き手になる。姿が違うのは種類が違うからではなく、置かれた場所が違うから、という読み方です。
ただしこれは作品の外からの推測で、作中に根拠はありません。公式が答えを出していない以上、別の読み方もそのまま成り立ちます。
はっきりしているのは、2作品が同じ名前を使っているという一点だけです。つながりの中身は、説明されないまま置かれています。
家に出たススワタリはどこへ行くのか
ばあちゃんの説明どおり、人が住み始めるといなくなります。
草壁家からは、引っ越した当日の夜にいなくなります。家族が風呂に入っているあいだに、群れが家を出て塚森へ飛んでいく。追い出されたわけでも、退治されたわけでもありません。
この退去に、説明のセリフは付きません。黒い粒の群れが夜空を渡っていく絵だけが置かれています。人の暮らす気配が満ちてくると、空き家と暗がりに結びついた生きものは自然と出ていく。ばあちゃんの言ったとおりのことが、言葉なしで起きます。
怖がらせるための存在ではなく、退治する相手でもない。この扱い方は、トトロにも塚森のクスノキにも共通しています。どれも退治されず、正体を説明されないまま、ただそこにいるものとして描かれます。
まとめ
- まっくろくろすけの本当の名前は「ススワタリ」。まっくろくろすけは、お父さんが絵本の名前として口にしたのを姉妹が使うようになった呼び名で、正体を教えるのはカンタのばあちゃん
- 姿は栗のイガのような黒い体に目が二つ。触ると手が真っ黒になる
- ばあちゃんは、恐ろしいものではないこと、人が住み始めるといなくなることを話し、自分も小さいころには見えたと言う
- 『千と千尋の神隠し』のススワタリには手足があり、釜爺の下で石炭を運ぶ。働かなければ魔法が消えてススに戻ると釜爺が話す
- 2作品のススワタリが同じ生きものかどうかは、スタジオジブリが明言していない
『千と千尋の神隠し』のもう一つの黒い存在については、カオナシの正体は何者?千を欲しがった理由を宮崎駿の言葉から考えるにまとめています。不思議なものを怖い話として読む見方もあり、その代表格はトトロの都市伝説は本当?サツキとメイ死亡説を公式と描写で検証で検証しました。
まっくろくろすけが出た草壁家は、愛知県のジブリパークに「サツキとメイの家」として再現されています。入るのに要る券の種類はジブリパークのチケット7種類の違い|プレミアムは必要?で整理しました。
参考
- となりのトトロ 作品紹介(スタジオジブリ) — https://www.ghibli.jp/works/totoro/
- 千と千尋の神隠し 作品紹介(スタジオジブリ) — https://www.ghibli.jp/works/chihiro/
- ススワタリ — Wikipedia(呼び名の由来と、両作品での姿の違い) — https://ja.wikipedia.org/wiki/ススワタリ


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