宮崎駿の「めんどくさい」はどの場面?「大事なことは面倒くさい」の意味

宮崎駿(宮﨑駿)監督の「めんどくさい」は、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』の中のつぶやきです。2013年8月26日に放送された特集「風立ちぬ 1000日の記録」で、『風立ちぬ』の絵コンテに向かいながら何度も口にしていました。

その流れで出てきたのが、「世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ」という一言です。番組では「大事なものは、たいてい面倒くさい」という字幕も大きく映され、放送の直後から名言として広まりました。

この記事では、どの番組のどの場面だったのか、前後で何と言っていたのか、そしてこの言葉が何を意味しているのかを順に整理します。

「めんどくさい」はどの番組のどの場面か

NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』の特集「風立ちぬ 1000日の記録」です。2013年8月26日の夜10時から11時15分まで、75分の枠で放送されました。

同じ年の7月に公開された『風立ちぬ』を、企画から完成まで追った回でした。2020年6月にも再放送されています。

「めんどくさい」が出てくるのは、宮崎監督が机に向かって絵コンテの作業をしている場面です。誰かに向かって話しているというより、手を動かしながらのひとり言に近いものです。その流れの中で、あの一言が出てきます。

放送から6日後の9月1日、宮崎監督の長編映画からの引退が発表されました。宮崎監督は9月6日の記者会見で、年齢とともに作品づくりに集中できる時間が減ってきたことを理由に挙げています。

宮崎駿は何と言ったのか

番組での言葉は、短いつぶやきの積み重ねです。放送の翌日に視聴者がまとめた書き起こしでは、次のような言葉が並んでいます。

  • 「めんどくさいなあ」「まことにめんどくさいよね」
  • 「ああ面倒くさい」「面倒くせえぞ」
  • 「何が面倒くさいって、究極に面倒くさいよね」
  • 「面倒くさいっていう自分の気持ちとの戦いなんだよ」

そして、自分の中のやり取りをそのまま口に出すように、こう続けます。

「面倒くさかったらやめれば?」「うるせえな」って、そういうことになる。

その先に出てくるのが、名言として知られる言葉です。

世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ。

番組の字幕では「大事なものは、たいてい面倒くさい」と大きく映されました。ネットでは「大事なことはたいてい面倒くさい」「だいたいめんどくさい」など、少しずつ違う形で引用されています。話した言葉と字幕が違うためです。

同じ回で、宮崎監督は「面倒くさくないとこで生きてると、面倒くさいのはうらやましいなと思うんです」とも語っています。直後には「この面倒くさい も押し流された人達がいる」というナレーションが入ります。『風立ちぬ』の制作中には東日本大震災が起きていて、番組はそのことも追っていました。

「大事なことはたいてい面倒くさい」はどういう意味か

僕は、この言葉を「面倒くさいことは大事だから、がまんしてやれ」という意味では読んでいません。むしろ逆で、「大事なことをやろうとすると、どうしても面倒くさくなる」という、順番の話だと考えています。

面倒くささは、手を抜かない仕事についてくるもの

宮崎監督は、面倒くさいと言いながら手を止めていません。言葉の上では文句を言い続け、その間も絵コンテは進んでいきます。

絵コンテは、映画のすべての場面を絵で決めていく設計図です。どの場面も「これくらいでいいか」と済ませれば、面倒くささはなくなります。でも、それでは映画が良くならない。面倒くさいと感じるのは、手を抜いていない証拠でもあるわけです。

面倒くさがる自分を、否定していない

もうひとつ大事なのが、「面倒くさいっていう自分の気持ちとの戦いなんだよ」という言葉です。面倒くさいと感じる自分を、宮崎監督は隠そうとしていません。面倒くさいのは当たり前で、問題はその気持ちに負けるかどうか、と言っているように聞こえます。

「面倒くさかったらやめれば?」「うるせえな」というやり取りも、同じ流れで読めます。やめろと言う声も、やめない自分も、どちらも本人の中にある。70代の監督が、それを隠さずにカメラの前で口に出したことが、多くの人に響いたのだと思います。

「うらやましい」の一言とのつながり

「面倒くさくないとこで生きてると、面倒くさいのはうらやましい」という言葉と並べると、別の読み方もできます。面倒くさいことがあるのは、守るべき暮らしや仕事が手元に残っているからだ、という見方です。震災のナレーションとあわせて観ると、面倒くささは、続けられる日常があることの裏返しとして聞こえてきます。日々の「面倒くさい」は、それさえ失った人たちから見れば、ありふれた暮らしがある証拠でもある。名言として引用されるのは「大事なこと」のほうばかりですが、番組の中ではこうした流れの中に置かれた言葉でした。

こう読むと、この言葉は気合いを入れるための標語ではなくなります。面倒くさいと感じたとき、それをなくそうとするのではなく、「いま大事なことに手をつけているから面倒なのだ」と受け止め直す。面倒くささを、やめる理由ではなく、続けている印として見る言葉です。

ただし、宮崎監督がこの言葉の意味を自分で説明したわけではありません。ここまでの読み方は、番組の言葉を並べたうえでの僕の解釈です。

なぜこの言葉はここまで広まったのか

理由は3つあると考えています。

1つ目は、言葉が飾られていないことです。「仕事に誇りを持て」のような立派な言い方ではなく、「めんどくさい」という誰もが毎日口にする言葉から始まっています。世界的に知られる監督でも、仕事の前では自分と同じように面倒くさがっている。その近さに、気持ちが軽くなった人も多かったはずです。

2つ目は、放送の時期です。放送の6日後に、長編からの引退が発表されました。最後の長編になるかもしれない作品に向き合う姿として、印象に残りやすい場面でした。

3つ目は、仕事や勉強の場面で使いやすいことです。面倒な作業を前にしたとき、「大事なことはたいてい面倒くさい」と言い換えるだけで、少し前を向ける。今では宮崎監督の言葉というより、仕事や勉強の場面で合言葉のように引用されています。

その後、宮崎監督は引退を撤回し、2023年に『君たちはどう生きるか』を公開しています。2013年の「めんどくさい」は、最後の作品ではなく、まだ続く仕事の途中の言葉だったことになります。

まとめ

  • 「めんどくさい」は、2013年8月26日放送のNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』特集「風立ちぬ 1000日の記録」の場面
  • 『風立ちぬ』の絵コンテに向かいながら、何度も「めんどくさい」とつぶやいていた
  • その流れで出たのが「世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ」。字幕では「大事なものは、たいてい面倒くさい」
  • 僕は「大事なことに手を抜かないと、面倒くさくなる」という順番の話として読んでいる

『風立ちぬ』がどんな映画だったのかは、風立ちぬは何が言いたい?意味不明に感じる理由を企画書から読むで整理しています。

参考

  • 宮崎駿のテレビ出演情報 — ORICON(「プロフェッショナル 仕事の流儀 特集『風立ちぬ 1000日の記録』」) — https://www.oricon.co.jp/prof/201611/tv/
  • 「大事なことって たいてい面倒くさい」 スタジオジブリ宮崎駿 の 言葉 — posfie(2013年8月27日) — https://posfie.com/@zairo21/p/ftLElyJ
  • 宮崎駿監督、引退会見に報道陣600人!1時間40分の熱弁で”大団円”迎える — 映画.com(2013年9月6日) — https://eiga.com/news/20130906/12/
  • NHK・アニメ関連番組を再放送 『未来少年コナン』一挙放送ほか — ORICON NEWS(2020年6月5日) — https://www.oricon.co.jp/news/2163792/full/

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